待つ必要はなくなった
「ジリは、フッタはいつかここを《出て行く》だろうってずっと覚悟してた。だから、いつ出て行ってもいいなんて言ったんだ。いいか、出て行ってほしいわけじゃあない。 狩だっておまえ一人で出来るようにしてやりたかったんだ。この陸を離れたいと言い出すのもわかっていた。ここのヒトの子じゃあなければ、外の陸から連れてこられたんだ。『力』がないってのは、ここのヒトじゃあなければそれもあると皆思ってた。 ジリは、おまえを本当の親にいつか返さなきゃならんと思って育ててきたはずだ。 なのに、・・・おまえは、あいつらと行くというのか?」
長老は自分のことのように悔しそうな顔をした。
いつもの怒ったような強張った顔はどこかへ消え、そこにあるのは、弱く何かを待つような、年老いたヒトの顔。
「 ・・・おまえはおれの子供ではないが、子もいないおれには子供みたいなものだ。それをまたあいつらに取られるなんて、ごめんだ。ジリはなおさらだ。―― だから、たとえおまえを何度助けていようとも、『決まり』があろうとも、ジリはアレを撃った。―― アレは、《テング》の次の『王』なんだろ?」
「『次の王』?」
「おれの前の長老はその前の長老から、カエルといっしょにテングの巣に行った長老から伝え聞いた話として、テングの『王』に、次はこいつらにまかせるつもりだと白と黒の若いテングを紹介されたという。ジリの子供をさらったのもそいつらだろう」
「そんなわけ」
「さっきの矢が今度のジリの答えだ。もう、『待つ』必要はない」
「なに、を?」
「決まっておるだろうが。ヒトとテングの戦いの始まりだ。 フッタ、おまええは離れずにしっかりとジリを助けろ」




