だから 待つ
「な、何言って」
聞き間違いか?
「いいから聞け」ヨクニはずいと迫ってくる。
また下がれば、その節が出た指が突き付けられる。
「おれたちがここに着くと、ジリはキリの横にいた。手には赤い小さな布袋を握って。子供と揃いのものをキリが作っておいたやつだ。それを持って、・・・ジリは、横になったキリの手を握って、産まれたはずの子供はどこにもいなくて、ここに白と黒の羽根が落ちてて、横になったキリは、息を引きとってた!」
長老の手が震えている。目玉がぎらぎらとおれを睨む。
ゆっくりとそれから視線をはずして、おれはゆっくりとジリをさがした。
ジリは、向こうを、まだ、エンが落ちた方を見やって動かない。
「・・・皆でジリの子供を取り返そうと、奥の森に押し寄せようと・・・」
あげていた手が落ちる音がして、だらりと肩の下がった年寄りが続ける。
「・・・したんだが。まず、カエルが、大昔ヒトとテングが争った話を始めた。そのときに、『決まり』が作られたと。 ・・・確かに、ヒトの長になる者には語り継がれている。『決まり』は守らねばならない。テングと争ってはいけない。だが、俺たちは『決まり』に従ったのではない。あいつが、ジリが、『いいんだ』なんて口にした」
『テングは何か理由があって、こどもを連れて行ったんだろう。それが終わればきっと帰ってくる。だから、待つ』
だから、《代わり》は、 ―― おれは、必要ないってことか。




