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狩りの矢
見晴台に着いた足が、速さに追いつかずにそのまま転がり、危うくまた落ちそうになる。
こんなことしてる場合じゃねえ。
ぶつかった手すりにつかまり見上げたら、窓から半身を出したジリが《狩り》をするように、エンをしっかりと追っていた。
「 やめろおお!!」
ブヒョッ
空を裂く音。
ジリがはなった矢は月に照らされて黒い空をわたり、同じように月に照らされた白い翼にあたり、羽が散るのがみえた。
「エン!」
飛んでいた高度は下がったが、どうにかまだ森の上を飛んでゆく。
ギョギョ ギ
弓の鳴き声がして振り返るとジリは次を引き絞っていた。
「ジリ!やめろおお!」
肩が痛いなんて言ってられるか!刺さった木片を引き抜いて奴に投げつけたのに、矢は放たれた。
あっという間のはずなのに一つ一つがはっきり見えた。
月に浮かんだ矢は、よたつくように飛んでいたエンに追いついた。
翼はとまり、照らされた白い姿が細長くなって、 ―― 落ちた。




