反転
さっきおれを止めたのはジリか?
「エン、家の上をもう一度飛んでくれるか?」
まだ見晴台にいるか?
「おれはテングに助けられたって、ジリにしっかり見せてやりたいんだ。そうすりゃあ・・・」
何になる?もう出て行くのに?
「・・やっぱりいいや」
サザナと違ってエンは、おれを抱えているだけでもう精一杯なはずだ。
その細い腕にぐっと力が入った。
「わかった。飛ぼう」
いやにはっきりと言ったその声は、今まででいちばん男に近かった。
顔を見上げようとしたら急旋回して「足は平気なのか?」と聞く。
「え?ああ。足は」
よし、と掛け声のように言うとそこからぐうっと低くなり、一気に向かう。
「おいエンこんなに低くちゃぁ」
ぐんぐん近づいてゆくとジリが見えた。
おれが飛び出た窓から身をのりだしていて、こっちに合わせるようにからだの向きを変える。
その手がもっているのは・・・・
――― うそだろ・・・
「や、やめろお!」
エンはそのジリの前を通り過ぎてすぐに反転すると、勢いで振られたおれの体を、そのまま放した。




