止めない
ぐうっと持ち上がったおれはジリが良く見える位置まで運ばれて、いきなり離された。
「サーナに伝えたのか?出てゆくと。」
青白く固まっていた体が前に傾く。
「い、言えるわけねえだろ?あんなことになって」
急にジリの顔があがり、正面から睨まれた。
「言わねば、出られないぞ」
「言わなくても行ける。サーナにはワッカがついてるよ」
寄り添って。
―― もう、落ち着いただろうか。
「言わねば、おれが出さん」
ぐっと後ろ首をつかまれる感覚。
久しぶりに、しつこいな。
「なんだよ。わかったよ。じゃあ、サーナに言ったら出してもらえんだな?」
揚げ足をとったつもりで、にやけてジリを見たら、首が離された。
「 ―― ただし、テングとはゆくな」
また、おれではなく向かいの壁に視線をもどした。
驚いたおれはすぐに言葉が出ない。
「・・・出て、行ってもいいのか?」
サーナに伝えれば?
「サーナは母親代わりだぞ。ちゃんと伝えろ。・・・狩を覚えていないお前がどこまでもつかはわからん。だが、もうゆきたいのだろう?おれはこれ以上とめることはない」
『 とめない 』
向かいの壁にそう言った。
・・・そうだった。こいつは。ジリは。おれに、『いついなくなっても平気』だと。




