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何も言わない
ざあっと体の中を何かが駆ける。
「・・・・わかってたんだな?おれがサーナに持って行くってわかって」
梯子の残りを上りきる。
『謝っておいてくれ』
「あれは、石のことだったのかよ?」
合っていたジリの目は正面の壁へ逸れた。
『船が一艘なくなっているのを見つけて』
「なんで、何も教えてくれなかったんだよ」
まんまえに立ってもこっちを見ない。
「何とか言えよ!黙ってないで!」
これじゃあ、いつもと同じじゃないかよ。
『黙ってないで!答えてよ!』
急にワッカの声が叫んだ。
「あれは、《ワッカの親父の石》で、それをおれがサーナに持って行くって、わかってて、なんで、どうして?どうして、あんたはなにも言わなかったんだよ!」
おれは、馬鹿みたいに肩で息をしている。
何も言わなかった。
おれもワッカに。




