※※※ 長老のはなし
「知らないな」
エンだけにやりとして答えた。
「教えてあげるよ。ヒトが暮らしてたこの陸にテングたちがたくさんやってきて奥の森にある一番高い山に『巣』を作っちゃったんだ。 山の上の方からとんがった何かが飛び出そうとしてるだろう?それはテングたちが王を乗せてきた『船」で、長老はテングは月から来たって。だからヒトに似たカタチだけど全然違うものだって言ってた」
「へえ」
その相槌もまだにやけている。
「その後ヒトとテングで《争い》があったけど今は、えっとね」
「『決まり』があるから《争い》は収まっている」
何の関心もなかったようなサザナがしっかりと言い切る。
「そう、それだよ。サザナは知ってるんだ。エンもちゃんと教わったほうがいいぞ」
「そう、だな」
上を飛ぶサザナを見ることもなくエンがつぶやいた。
フッタは子供の勘で何かいけないことを言ってしまったのに気づく。
「平気だよ。エンだってこれから教えてもらえばいいんだよ。そうすればどうしてみんながテングを嫌がって・・・」
フッタの声が小さくしぼんだ。
エンが笑う。
「嫌か?フッタは?」
抱えられた子供は小さく首を振る。
「長老の話を聞いてたときは嫌だったけど、今は嫌じゃないよ。エンもサザナもとてもいいヒトだもん。みんななんであんなにひどいこと言うんだろう」
「そうか。言うか」
「うん。『決まり』があるからおれたちはあいつらを退治できないんだって。本当は空を飛んでるのを見たくないって。 おれはさあ、前から好きだよ。飛んでるのを見るの。きれいだし」
「そうか」




