71/217
ここにいたら
「 サ 、」
「かあちゃん」
ワッカがしっかりと支えた。
そうだ。
サーナはワッカの母親だ。 そしてあの石はワッカの父親の。
おれは動けずにテーブルをつかむだけで・・・。
震えた細い泣き声が足元を伝ってくる。
「 ごめん 」
声がして、おれの手がテーブルをつかんでいた形のまま、勝手に離れた。
体が少し浮き上がり入り口の所まで移動すると、どんと背中がドアを押し開いた。
「・・・悪いけどフッタ、帰ってくれるかな?」
部屋の真ん中のこんもりした塊から、おれを『力』でもちあげたワッカの顔だけが、こちらを向く。 その顔は、母親を守る息子のものだった。
「・・・ごめん」また、ワッカはなぜかおれに謝った。
なぜ、何を謝ってるんだ?『力』でおれを動かしたから?
ああ、急に理解した。
――― おれはここにいちゃいけない。
目をそらし、あごに力をいれると、サーナの泣き声を聞きながら森を目指して走った。




