70/217
この陸を出て行った
サーナが体と一緒に首を振って残りを吐き出す。
「と、とうちゃんは・・で、出て行った。この陸を・・」
ワッカがこっちを見たのがわかる。
でもおれはサーナから目が離せなかった。彼女の体がいきなり動物のような素早さでワッカの手にあった石を奪い取り、涙で濡れた顔に押し付ける。
「あ、あたしがあげたこのお守りをつけて、出て行ったんだ。お腹にはあんたがいて、ジリも長老も、カエルまで止めてくれようとしたのに・・・、一度は諦めたみたいに見えた。それが、突然」
石から離れた顔がゆっくりとこっちを見る。
「何も言わずに・・・ある朝起きたら、あのヒトはいなくなっちまった!ジリが、船が一艘なくなっているのを見つけて、それっきり!」
悲しみと悔しさを訴え、石を両手で掲げ上げると何かを搾り取ろうとするかのように握り締めた。
ゆっくりと震えながら降りた手はサーナの胸に取り込まれて、丸めた体から苦しい声が漏れてくる。




