あの事
「 でもそれは子供だから許されたんだよ。もう、そんな遊びはおしまい。子供は禁じられたことをしたくなる時期があるからね。 みんな黙ってた。あんたは知らないだろうけど長老を交えてみんなで話し合ったことがある。ジリがそこでみんなに頼んだんだよ。フッタには何も言わないでくれって」
「ジリが?」
なんだかわからないけど口の中が渇いていた。
あの溢れた涙。
「そうさ。ほんとうはジリが一番嫌だったろうに。あの・・・まあ、いいよ。 そう、とにかくあの無口で不器用なヒトが言ったのさ。フッタが大人の仲間に入るまで何も言わないでほしいって。あたしは、・・あんたが大人になるまでまだあるけどさ、もう言っていいと思う。もう、見ちゃいられないんだよ。あんたたちをさ。 ―― だいたいあんたを連れてジリが初めてあたしのところに来たとき、うちで育てるからって言ったんだ。ワッカと一緒にそれこそ兄弟で育てるって。でもジリは、おれが育てるって言って渡さなかった。 ・・・あのヒトは、オカミサンと赤ん坊をあんなふうになくしてずっと一人でいたから・・・、あたしはもうそれ以上言えなくてさ。 それでも、あんたがしゃべる前まではよかったのに、言葉をしゃべるようになったら『お前はおれの本当の子供じゃない』なんて教えだすし、まだ小さくて届かないのに川へ漁に連れて行ったり、見ていてこっちがはらはらするような事をしだしちまって。 あれじゃあフッタに誤解させるようなもんさ。なのにジリはそれでいいから何も言うなってあたしにも頼んだ。それにあの事も」
「あの事?」
サーナが口を開けようとしたとき、ぐうううっとワッカの腹が鳴った。




