55/217
※※※ まだ
「羽をあげるんだ。そうすれば涙は止まるだろう。さあフッタ、エンに汚れを流してもらえ。その間にその『海の真ん中の実』のことを調べておこう。この家の壁にあるのは全て『書物』という代物で、知りたいことはたいがい記してある」
「じゃあ、おれが誰の子供かも?」
急き込んで聞くフッタは、一歩足を踏み出す。
見合ったサザナは驚いた後に少し悲しげな顔になり、
「すまない。間違えた。知りたいのに記されていないこともある」と言いなおす。
一歩戻ったフッタはさらに半歩下がり、エンにもたれるように止まった。
「 ―― 沼の水は匂う。さあ、流そう」
優しい声をかけられ、フッタは重い足取りでエンに付いて行った。
見送るように黙っていた、残された者が口をひらく。
「いいのか?」
「しかたがないだろう?」
―――― まだ、これからだ。
※ ※ ※




