※※※ おれを誰だと
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そこに立っていたのはフッタよりも大きいが大人ではなく、ヒトでもないものだった。
「なんだ?騒々しいと思ったらお前らか。ほう、しかも子供?ヒトの子だぞ」
ドアを開けて入った赤い屋根の家の中はとても薄暗くて、壁にはたくさんのものが納まったりはみ出したりしている。
その前に置かれた大きな机から立ち上がり近くに来た『カエル』に髪はなく、肌はつるんとして黄色だった。平たい顔にずんぐりした体。手足は妙に細長い。白い服の上に窮屈そうな黒い布の袖のない服を重ねて着、これまた窮屈そうなものを穿いていた。足先には軟らかそうな革。
話には聞いていたけど初めて見た。
「・・・しゃべってる」
口をあけて見上げたフッタはやっとそう言った。
「当たり前だ。おれを誰だと思ってる?」
金色の目の中、黒目がじろりと動く。
「カエルだろ?頭がいいんだってワッカが言ってた。だからヨクニみたいな、」
「ヨクニ?ああ、ヒトの長か。おれはあんな年寄りでは・・まあいい」
大きく一直線に近い口がひらき、喉の奥からからまるような笑いがもれる。
「ヒトの子が着られるようなものはないか?少し、沼の水がかかってしまった」
サザナはさっきから子供が濡れていることが気になっている。
「ほう、《沼》か? あそこにいたのか?」
カエルは奥にある部屋へ消える。フッタはその後を追ってみたいのを我慢した。