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熟れた実
手に取ったその実は今年も豊作で、黄色い果肉を皮から押し出すように熟れ、あたりにただよう甘くしつこい匂いに誘われた羽虫が無数に飛び交う。
奥の森から一本突き出た巨木の、てっぺんにおれはいる。その木の大きな葉が全て落ちるいま頃が、この木の実の収穫期なんだ。
「それはやめろ。熟れすぎている」
たしかに。実をつかんだ指が、ぐじゅりと入ってしまった。
「・・・なんだよ。じゃあエンが自分でやれよ」もっとはやく言ってくれとおもいながら目をむけると、相手はすましてこたえる。
「わたしがこれを? とんでもない。断る」
おれはため息をつき、作業を続けた。




