おれが渡す
ジリはやっぱり何も言い返さなかった。すぐに反応するのは《テング》のことぐらいだ。
まだ両手で顔を覆っていたが、しゅううっと息を吐くとゆっくり立ち上がった。
「 ―― さっきの石を返せ」
「これ?どうすんだよ。ジリのものになるのか?」
おれがつまみ上げると、じっとそれを睨んだ。
「ちがう。持ち主は・・・長老に相談してからだ」
言いながら手を出してきたので、さっとつかんで手の中に納めた。
「じゃあ、おれが長老に渡しておくよ」
このにやけた顔をどうみたのかわからないが、ジリはどうにかうなずいた。
「 必ず、渡せ 」
椅子を鳴らして立ち上がる。
「ああ。で、食事どうすんだよ」
ジリは狩りの袋を担ぎ、一回動きを止めた。
「サーナに・・・謝っておいてくれ」
その返事に安心した。
食事は落ち着いて食べたいもんな。
がちゃりと音をさせ袋を担ぎなおしたジリは、首だけをまわした。
「それと、ワッカに、今日の魚は干してる間にネズミに食われちまったって言ってくれ」
ネズミに?いったいどこに干して置いたんだよ。
聞く間もなく、虫の鳴き声がさわがしい外へ出て行った。
こんな時間にどこに行くんだ?ま、いいけどさ。




