※※※ もうへーき
※ ※ ※
「あーあ、水がついたよ」
「仕方がない」
水に落ちそうな子供をさらったのは翼の生えたヒトのカタチをした者で、こどもを抱えたまま空へとでた。下の沼では赤黒く大きなハサミが水から突き出て、何かを探すように左右に揺れている。
抱きかかえた子供がぎゅっと閉じていた目を、そうっとひらいた。
「もう『へーき』だ」
子供を抱えた白い翼の方が笑いかけると、子供は縮めていた体の力を抜き、その途端に少し重くなって一瞬ぐらつく。
「わたしが抱えよう」
傍らを飛んでいる黒い翼が腕をのばし、その子供を抱いた。
「サザナ、カエルのところに行こう。わたしもすぐにこの汚い水を洗いたい」
自分の白い翼を確認するようにその顔を上向ける。
とたんに子供が「あ!」と叫んだ。
「白い羽!袋!」じたばたと暴れだす。
サザナが微笑んでその体を抱えなおした。
「危ないぞ。ヒトは翼がないのだろう?ここでわたしに放されたら落ちて死ぬぞ」
抱えられた子供は急にぐったりして、何かをつぶやき、そして声をあげて泣き出した。
「どうした?どこか痛むのか?」
それでも泣き続ける子供の周りをエンは困ったように飛び回る。それをおかしそうに眺めてからサザナがやさしく語りかける。
「もうすぐ下りられる。泣かないでいい。あの白い羽も貰えばいい」
「羽?わたしのか?」
突然子供が泣き止んで顔をあげる。




