ひとりで海へ
「海なんかいつでもいけるだろ?」足の下で枯葉がせわしい音を出しておれのイライラは増す。
「そりゃあフッタはいつだっていけるだろうけどさ。・・・あいつらもいるし」
じろりと見てやるとぷよぷよした指でじぶんの口をつまんで閉じさせた。
くやしいので、言い返す。
「『あいつら』に、・・・《テング》に連れて行ってもらわなくても海ぐらい行けるって。お前も一人で行ってみろよ」一日じゃあ着かないけどな。
「ぼ、僕は、嫌だよ。だって狩だってみんなでやるんだから一人で海に行ってもしょうがないし」
たるんだ頬と顎をぷるぷるいわせて首を振る。
まったくガキなんだ。おれと同じ年なのに。
「狩なんかじゃなくって見に行くだけでいいんだよ。楽しいぜ。船に乗ってみると風が渡ってさ。石を投げると魚がそれを食いに飛び上がったりして」
「フッタ、船に一人で乗ったの?あぶないからだめだよ。絶対に。今日ジリも言ってたし、かあちゃんもよく言ってる。一人で乗ったらだめだって。フッタも守らないと怒られるよ」
ワッカの親父はワッカが生まれる前に死んで母親しかいない。もっとしっかりしろよ。




