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ワッカ
「フッター!」
カエルの家から出て森の中を歩くおれを後ろから呼ぶ声がした。
振り向かずに一気に走り出す。
「おーい!待ってよ!」
その声で突然足が動かなくなり、そのままの体勢で顔から転んだ。
「ってえなあ!」顔と頭についた落ち葉を払って怒鳴ったら、ワッカが丸い体を左右に揺らしながらやって来た。
「『待って』って言うのに走り出すからだよ」
ぜえぜえ息をつき、手を差し出す。
《ヒト》はみんな、こんなふうに手をつかわずに、とめたいものを『とめ』、動かしたいものを『動かせる』みえない『力』を持っている。
――― おれ以外はみんな。
「フッタは足が速いからさあ」
「だからって『力』で《止める》ことねえだろ」
ぷよぷよしたその手を思い切りはたいてやる。
「いっつも楽な方ばっかり選ぶなよ」
睨んだのにあいては悪気もなくいつものように笑う。
「ごめん」
また出された手をしかたなくつかんで立ち上がると、「あれ?」と顔をのぞきこんできた。




