命令
「ほんとだって。それより、その出て行った奴は?どこに行ったんだよ?」
「 ・・・ああ、出て行った奴はな、・・」
口を引き結び眼鏡をかけなおした。
「 ―― どこに行ったのかもわからないな。 戻ってきた奴なんていないからどこに行ったかすらわからない。戻りたくても戻れないところなのかもな。 だからな、フッタ。出て行くからと相談に来たやつには必ず言っておくことにしてるんだ」
姿勢を正し机の上で長い指を組んだ。
「―― まだ生きたいのならここを出るな」
「・・・・・・・」
おれたちは無言でしばらく睨み合った。
いや、カエルはいつも無表情だから、睨んでいたのはおれだけか。
「そう睨むな。ここから一人で出て行くってことは、そういうことだ。この陸はいい。気候も落ち着いているし我々の生活を脅かすものだってあの《カニ》ぐらいしかいない。《テング》とヒトの関係も今は落ち着いている。ここは楽園だ。――― いいかフッタ、やめておけ」
いつもの突き返す言葉ではなく、それはカエルからの命令だった。




