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ここが境目
「えっ?」
頭を上げてカエルを見た。
初めて聞くし、考えたこともなかった。
「いるのか?どんな奴だよ?」
「 ここを出て外を目指すってのは時々、出てくる。《変わり者》だな。 そしてたいがい、おれのところに聞きに来る」
「何を?」
「外の《陸》の話を知らないかって、な」
ああ、そうか。なにしろカエルは特別だ。
森の中に一人で住まうこいつを、ヒトは皆知っている。
わからないことや困った時に食べ物を持参し、相談にくる。怪我や病気もこいつは治す。
それに、カエルは時々ヒトに自分で作った『お礼』の酒を分ける。この評判がいい。
まあ、尊敬されてるのは確かだな。あのジリでさえ、ここに出入りすることには何も言わない。
だが、用があるとき以外はここにヒトは寄り付かない。それはここが、ヒトとテングの境界にあたるからだろう。