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こっちを見上げ
船が、何かに乗ったように、ゆっくりと、まっすぐ海へ進みだした。
「うまくいったな」
頭の上にサザナの声を聞いたとき、おれたちが出てきたあのドアが、黒い口を開けた。
「な」
その淵にしがみついてぼさぼさの髪と髭がひっぱられるようになびいて
「・・・ジリ」
風に飛ばされそうになりながら壁にへばりついて、少しずつ出てくる。
サザナが船を追い、ジリがこっちを、見上げた。
「じ、ジリ!何やってんだよ!」
喉がおかしくなるかと思うほどの声で叫んでやった。
ジリの何かを言い出そうかとするようなその口は開いたままで、こっちを見上げて
「危ないって!戻れよ!」おれは手を振り回す。
それでもジリはこっちを見たまま動こうとしない。




