わりと長く生きているカエル
ここに来たときの指定席である長椅子にまた寝転がると、背中で手を組んで爪先立ちしたカエルが笑った。
「そうだ、出て行く前にジリを『ぶっ飛ばしてから』っていうのがついたが、あれはどうするんだ?」
上の棚から一冊抜き取ろうとしていたのをやめておれ見た。
「ああ、そうだよ。しっかり『ぶっ飛ばしてから』出ていくさ」
しかたなく立ち上がり、代わりに取ってやった本を渡す。
この背でも、カエルだけは追い抜くことができた。
書物を受け取るとったカエルはその背をいっそう丸め、でかい口をよけいにまっすぐに引き結ぶと、飛び出た金色の目でおれをにらむように見上げた。
目とおなじようにはなれてついた鼻の穴から大きく息をだすと、また机に戻る。
ろうそくがじじっと鳴いた。
「 ・・・なあフッタ」
先が丸まった指で眼鏡をはずし、少し目をつぶる。
暖かくならないと外に出ないカエルはこの季節もう寒いと感じるのか、長椅子にはみなれない毛織物がたたんで置いてあった。
おれはそれを頭の下に入れて横になる。
「なんだよ?」
「おれもなあ、わりと長く生きてここにいるんだが、・・・この陸を出て行ったやつが、いままで、いない、わけじゃない」




