赤い袋
「フッタ、ジリとはあまり話せなかったな」
サザナが船の出口で止まる。
「いいよ。あれでも、十四年分は話せたよ」
おれはなんだか楽しいのに、サザナは笑わず、何かを出した。
「キリが、お前に作ったものだ。カエルが預かっていた。持ってゆけ」
ヤシナのよりもずっと新しくきれいな赤い袋だった。
これから会えるはずのそのヒトを想像して、ぎゅっと握り、そっとしまった。
おれはカエルに教えてもらったとおりの出口を開けた。うううう、と聞きなれない音がして、船の横腹に出る口が開く。
ざあっと巻き起こった風に足が浮いたと思ったら、サザナと飛んだ。
「少し、船を見届けるぞ」
真下の岩山の向こうは木々の無い赤い陸で、いきなり外の海とぶつかる。おれ達の海と違って白い波が立ち、それが勢いをつけて赤い陸を削り続けている。
山の手前は緑の森。向こうに突き出た『力』の実のなる木。カニの沼がぬらりと光っている。
ヒトの森の木はなぎ倒されて、所々にうずくまる黒い塊からはまだうっすらと煙が上がっている。あれらの向こうにはヒトの家があるはずだ。




