『変えるなら今のうち』
「・・・特にサザナとエンは。 ――― 好きなときに、好きなところに出られる」
「まあ、たしかにいつもいきなり空から現れるな」
あれには驚く。
「 さらにヒトと年の加わり方が異なる。ヒトは、昔よりも更に早くなったようだ。やつらは遅い。結果、ヒトよりもはるかに長く生きられる」
「初めて会ったときから変わらねえもんな。あいつらも、あんたも。あんたはなんで」
「で、行くのか?」
聞こうとしたことを断ち切られ、『テング』にも聞かれたことをまた確認される。
「行くってずっと言ってるだろ?」
『テング』のエンとサザナ。そしてこのカエルには、おれはここを出ると、ずっと言い続けていた。
「気を変えるなら今のうちだぞ」 眼鏡越しにぎょろりと動く黒目。
「行くって!」
起き上がったおれを楽しそうに眺めてから、机を離れて本棚の前にカエルが立つ。
くそぅ、最後までこいつに試されているみたいだ。
机の上でゆれるろうそくの火をみながら、おれがここで口にする言葉は、いつもこいつに突き返される。
『そうなのか?』『それでいいのか?』『よく考えろ』。
まったくいつまでも子供扱いで腹が立つ。




