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※※※ もう動かない
訪れたのはあまりの静寂で、出し抜けにわたしたちは置き去りにされた。
もう動かないキリ。
わたしは声も出せず、立っていられなくて、翼が床をこすった。わたしたちの最後とはあまりにも違ったそれに、身体が震えている。
うつむいて動かなかったジリが喉を震わせ、片手でキリの額から頬を撫でた。落ちた手を持ち上げ、体の横にそろえて撫でる。
ジリの片腕の中で赤ん坊は、何もなかったかのように目を閉じている。
「 ありがとう。サザナ。 キリは、 ・・・おれたちは良い友達を持った」
キリが落とした赤い袋を拾う。
「カエルはこの前一日かけて、おれたちが子供の頃からの出来事をずっとキリと腹の中の子に向かって語り続けていた。 あのときのカエルも、今のサザナも、ヒトだったら涙を流しているだろう」
赤い袋を赤ん坊の服にしまうジリの顔は、その『涙』で、てらてらと光っていた。




