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※※※ 赤ん坊の名はヤシナ
布からそうっと持ち上げた生き物は、いやに赤みがかって頼りなく、わたしたちの卵から出てくる子よりも小さい。
ジリが抱え直すときにぐにゃりとするのを見て、あの感覚を思い出す。
「 き、キリ、や、ヤシナだ。おれたちが待っていた、これが、ヤシナだ」
『ヤシナ』と名付けた赤ん坊をキリに見せるように抱えて、ジリが半分泣くように笑っていた。
キリの息は整うことがなく、ジリと赤ん坊にどうにか微笑んでから、さらに引きつるような息になった。どんどん苦しそうに。
「ジリ、カエルを呼ぼう」
堪えられずに言うが、カエルは《キリの最期》を、みとっていないはずだ。
それでもわたしは行くつもりだった。
おかしいほどに震えるキリの手が、赤い袋を持っている。
もう、これ以上、見ていられない。
「カエルを呼んでくる」
わたしの声にまた赤ん坊は泣き出し、慌ててそこを出ようとしたら
「待ってくれ」
ジリの声に止められた。




