※※※ おまえは言わない
※ ※ ※
「『気になる』こと?」
ききかえすと赤ん坊の泣き声に少し耳を傾けたジリは髭をかく。
「なあ、お前たちが何年か後のおれに、この子を返すっていうのが、おれは心配なんだが・・・。キリは、・・・お前らが見た先には、もういないのだろう? おれ一人で、子どもをちゃんと育てられるか・・・」
「安心しろ。お前はちゃんと育てる」
わたしはすぐに答えた。
「それに、一緒に暮らしたら、おれが親父だと言ってしまうかもしれない」
「お前は言わない。 逆に何も言わないから、かなり苦しい状況になる。それでもお前は言わない」
わたしの言葉に、「そうか。言わないか」つぶやくとまた海を見て
「そのほうが、よいな」
何かを確かめるように、うなずいた。
「 ところで、エンはいったいどうした?」
まだ響いている赤ん坊の泣き声は、今まで聞いたこともないもので、わたしはそちらに気を取られる。 だからすんなりと言えた。
「 ―― エンは、むこうでわたしを待っている」
「そうか、お前らは何年先までもずっと一緒なんだな」
その暖かい笑顔がわたしには痛い。もちろん自分がエンを撃ってしまうことなんてジリは知らない。
赤ん坊の泣き声がさらに響いてきた。
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