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すぐそこに
そのとき、ヤシナの足元にある槍を目指して男が走った。
「さわるな!!」
ヤシナの怒声で男の体が浮かび戻される。だが、カミサンたちをテングにとられた男たちは、ヤシナをののしりながら次々と差し出した武器を目指して走った。
「元に戻れ!」
ヤシナはもう叫ぶだけで『力』を使って押し戻そうとはしない。
それよりも森の向こうを気にしているようで首をまわした。
「うるせえ!裏切り者!」
一人が飛びかかった。
サザナに矢を放った男だ。
「やめんかあ!」
怒号と共にその体が他の男たちの上に飛んだ。
ジリだ。
棒もジリが『力』で押さえているようで動かない。それでも倒れた男たちはそれをつかみ「矢を返せ!」と口々に叫ぶ。
赤い顔でジリが叫んだ。
「耳を澄ませ!カニがすぐそこに来ている!」
「何がカニだ!」
ばぎばぎ、と木々が折れる音。
きちきちきちきち きちきち
耳慣れた音に、ようやく男たちに別のおののきが訪れた。




