誘い
地上に降り立つころにはからだの中のなにかを出し尽くしたみたいで、もう何も出なくて座り込んだ。
「フッタ、本当にこの陸から旅立つのか?」
枝から籠を取ってきたサザナが前に立つ。
「行くよ」
「・・もう、決まっているのだな?」
籠を持ったその顔が少し険しくなる。
「ああ、そうだよ」
もう、ずっと前から言い続けてたんだ。知ってるだろう?と見上げたその顔が突然ほころんだ。
「――― なら、フッタ、ゆく前に、わたしたちのところに一度、来ないか?」
尖った岩山へ。
「・・・『テングの巣』に? あ、ごめん」
驚いてつい、その呼び名を口にしてしまった。
「ああ、そうだ。わたしたちの《巣》に」
サザナはやさしく笑い、それに、と続けた。
「フッタさえよければ、わたしも、一緒にゆくぞ。旅に」
それは、実はさっき口から出そうになった願望で ―――
「・・・いいよ。サザナが行くなんて言ったらエンが黙ってないだろうし。だいいち、おれには行く理由があるけど、お前には無いだろ?」
それ以上サザナは口をひらかず、薄く笑うと風を巻き起こし、真っ黒な翼で空へと消えた。
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