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カエルは知っている
「なあ、知ってんだよな?カニが来るって」
外に出した長椅子は、たくさんのテング達の白い腕がのびて空に浮く。
それを見届けたカエルが観念したように「 ああ。知ってる 」と答えた。
「これからヒトが何をしにどこへ行くかも?」
白い羽が揺れながら落ちてきた。
「知ってる」
そこで、おれが何も言わないのを確認するようにこっちを見てきいた。
「サーナはどうだった?」
「ああ、なんか、・・・思ったより元気そうだったよ」
なぜか顔が熱くなる。
椅子が最後だったらしく、それをもつテングたちはゆっくり空へ消える。
「元気、そうなだけだ。熱はまだあるはずだぞ。子を育てるヒトの親というものは、強いな。おれはいつも感心するぞ」
どこから出したのかあの赤い布を肩に巻き「ようやくだ」言い聞かせるかのようにおれに向く。口を開きかけたとき、その羽ばたきが聞こえ、見上げたら黒い風が舞いテングが一人降り立った。
「・・・サザナ」
その顔はまだ硬いままでおれを見たのに何も言わない。
謝るだけでも。
「あ のさ」
「では先に、巣にゆくぞ」
カエルを抱えたサザナは高く舞い上がる。
「さ、サザナ!」
戻ることはなく、黒い点は空に消えた。




