※※ とどかなかった
※ ※
カエルの所で船の書物を探していたらドアがゆっくりと開いて、おかしな立ち方をしたエンが月に照らされていた。
「何してた・・・ どうした?」
服からは水が滴りその髪はおかしな乱れようで、おろした肩口から先がなかった。
「お前髪を、いったい・・・」
「早く入れ」
カエルの冷静な声がする。
わたしは入り口を塞ぐように立っていたことに気付き、慌ててエンを抱えるように連れて入った。
「湯を沸かそう。布もあるだろう」
カエルはさっさと奥に消えた。
「おい、エン」
「た、・・・助けられませんでした」
「何を?」
「狩の船に乗って外の海にいたから、間違って出たのかと、」
「ヒトか?」
今日のように月が明るい夜は、海に罠をかけに出ている。
エンはランプの明かりにもひどいと思える顔色で震えていた。
「 船を戻すかと聞いたら『他の陸を見にゆくのだからかまうな』と」
「それは、首に緑の石をつけていたか?」
いきなり戻ったカエルの声にエンがびくりとした。
「そ、そうだ。手を、ふ、振り回して、『怖くないぞ』と叫んだ。わたしは離れて見送るか、ジリに知らせるか考えて、いた、ら」
「魚が来たか?」
カエルは乾いた白い布をエンに渡す。
「あいつらは頭がいい。ヒトが一人で船にいれば自分の獲物になることを知っている」
「い、急いで飛んだのに、船は、あっという間に返されて、ヒトは、すぐに浮かんできたのに、わたしの手は・・・」
自分の細い腕を見つめ、その顔がみたこともない歪み方をした。
「と、どかな、かった、すぐそこにいたのに、目が合ったのに水が襲ってきてわたしは、それをよけてしまった・・」




