ぎゅっと
すごく緊張して入ったら、サーナが笑っていた。
「フッタ!なにおかしな顔してるの?」
ぎゅうっと抱かれたおれは、軽く抱きかえす。
「ごめん。・・・・大丈夫?」
それが精一杯だった。後は奥歯をかみしめる。
「あら、ほんと」
離れて覗くその顔はまだ熱があるのかすこし赤くて、鼻はもっと赤かった。
「うつると困るからもういいわ。フッタ、急に大人になったみたいだね?」
おれを離すとサーナは少しのけぞって、まるで遠くから見るようにした。
「おれが?」
「ワッカが言ったのに信じられなかったけど、ああ、本当だわ」
奥にいるワッカがぷるぷるとうなずく。
「そんなわけないだろ? おれは・・・ようやく自分が子供だってことに気付いたんだからさ。サーナにも嘘ついて、黙ってこの陸を出ようと思ってた。ごめん」
言い終わらないうちにぎゅうっとまた抱きしめられる。
「だろうと思った。あんたは昔から心配かけないようにへたな嘘をつくときがあるからね。でも、いいんだよ。あんたが陸を出たいって言い出すのはわかってた。本当の親に会いたいだろうし、昔からフッタは思い切ったことするからね。 だから、逆にあたしのダンナが、―― ワッカの父親が陸を出たままいなくなっちまったって知ってほしくなかったのさ。余計なこと考えさせるのは嫌だし、あたしもまだ・・認めたくなかったんだね。 永いこと黙っててごめんよ。フッタも、ワッカも」
またぎゅっと抱きしめられて、むこうのワッカが笑う。
おれも、笑ってやった。




