十八年ぶりに戻った男
ヤシナは下のヒトを指し示した手を振り上げた。
「早く戻って準備をしろ!整いしだい、望むとおり、あいつらの巣に行ってやるんだ!」
おおおう
ヒトたちは方々へ駆けて散った。
ジリはもうどこもつかんでいないのに、おれは立つこともなくそこに座りこんだ。
「 ・・・そんで・・・みんなで弓矢を持って巣に? ヒトは謝ることもなくて、いきなり矢をテングに当てる?」
ああ、おれもまだ謝っていないけど。でもこんな・・。
うっすら笑った奴は「そうだな」と、うなずいた。
ヤシナは、テングを撃つのが当たり前だと思ってるんだ。何で?
「何でだよ?あんた、テングとしゃべってたんだろ?巣にいたとき。昨日までのことだよな?」
あんなにやさしげに笑っていた顔には、今は作ったような笑みがはりついて。
「ああ。出る直前までしゃべった」
なのに
「なんで?いったい何言ってんだよ?」
なんで、そんなことが言える?
「何って、テングとヒトの争いだ。しかたがないだろう」
争いは前からあった。だから『決まり』がつくられて
「あ、あいつら、いい奴らだぞ?」
でも破ったのはヒトたちで
「そうか?俺は十八年さらわれていた」
「そ、それはっ 」それは、それは「 それはおれのせいだから!だから」
「ワッカとサーナを迎えに行け」
落ち着いた低い声でヤシナはおれに命令した。
今ヒトをまとめているのはこの男だ。
おれは改めて奴を見る。
十八年ぶりに戻って、『力』が有り余るほど強くて、若くて逞しい、戦いを導いてくれる。
奴は笑い、おれは睨んで窓に跳ぶ。
「フッタ!」
おれがつくった穴の手前に降ているのを見つけ、ジリの顔が和らいだ。
「危ないから穴を塞ぐまでここから降りるな」
「ヤシナは落ちても平気だよ。塞ぐ必要ねえだろ」
ここはジリとヤシナの家だ。おれの居場所はもう無い。
「フッタ!」
ジリはおれを呼んだが、あいかわらず止めようとはしなかった。




