叫ぶ
「それほど広いものではない」
空から下を眺め続けた『テング』が言う。
少し先で森は切れ、そこからは海が広がる。
空と海と風が混ざって、すんだアオがどこまでもつづいている。
「・・きれいだな。あの向こうは、もっときれいかな」
答えはなく、浮くようにのめったあと、見えない風にぶつかりながら、―― 下へ下へ。
翼が風にのって音をだす。
段々と息苦しくなり、どんどん下に吸い込まれる。
空を飛ぶってことは、空に突き放されたり押さえ込まれたりすることなんだと、サザナのおかげで知ることができた。
「あ」のさあ、っていきなり出そうになった言葉をすぐに飲み込む。
「なんだ?」こんなに風の音がすごいのにサザナには聞こえていたらしく、おれはあわてて首をふった。
「なんでもない」
向こうの連なった岩山から異様に突き出る尖ったモノが、陽の光を鋭くはねかえす。見ていたら叫びたくなって叫んでいた。
意味のない声はただ風にのまれる。
山も木も、サザナも何の反応もなし。自分でも何なのかよくわからないから、きかれないのがありがたい。




