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戦いの先導
待ちわびたそれに皆が飛びついた。
窓が揺れる歓声。
おれはさっきから『力』で毛織物に顔を押さえ込まれ、息苦しくて叫ぶどころじゃない。
「ヤシナ、フッタが、息ができんぞ」
ジリの声がする。
「あ、やべえ」
体は開放され、咳き込んだ。
外は熱狂的な騒ぎになっている。
「みんな、必ず狩の道具を持ってこいよ。それから、鍋とカミサン、子供を忘れるなよ」
どっと沸く。
「おいヤシナ!矢をまだ作ったほうがよいか?」
下からの問いにヤシナは一瞬、顔をしかめた。
「いや、―― もういい。こういうことは用意している間に感付かれることがあるからな。速やかにできることを優先してくれ」
さすがだ、という声があがり、「ヤシナがこの戦いの先導にあたってくれれば俺たちは勝てる!」おおっと声があがる。
さぞかし気持ちいいだろうと奴をにらんだら、ヤシナは笑うこともなく下を見ていた。
その目が冷たい。




