引っ越す先は
「ああ、それは悪い。ジリもお前も確かに久しぶりの再会を喜びたいだろうけど、まだ早いだろ? だって《テング》との戦いが始まったんだぞ。あいつらがまた、いつやってくるかわからないんだ。おれたちは決着をつけねばならないぞ」
「いや、あいつらから来ないだろ?戦うための道具なんか持ってないし。あっ!そうだ。おれ、うっかりしてたよ。 ――― 道具はあるんだ。あいつらのところには。『硬いモノ』が」
「そんなもの、」
言いかけたおれを振り返ってヤシナが続けた。
「巣に刺さったあの『船』には、そういうものがたくさんあったなあ。 長くて細くて鋭い刃とかな。あれは、よく切れそうだった」
「そんなもの、あいつら使わねえよ」
奴は睨んだおれに微笑みかけながら、外のざわめきを確認してさらにつけくわえた。
「 ―― あの刃を取り上げておかないと、安心できないかもな」
おおう、っと下から賛同の声。
「ヤシナ、なに言ってんだよ?」
おれと目をあわせたままの男はさらにわらった。
「あと、おれ、思ったんだけどさ」
腕を組み窓の下に話しかける。
おれはやっと気付いた。
ヤシナは今思いついたことを口にしているのではなくて、よく考えぬいたことを集まったみんなに提案しているんだ。
「 みんなで引っ越せばいいんじゃないかな? ―― テングの巣に 」
「なんだって!?」
おれだけじゃなく下からもうろたえた声があがる。




