仲間がいない
さっきのエンのように高くあがって回り、さっきまで実を収穫していたその巨木を見下ろした。
「いいか、フッタ、これをよく、見ておいたほうがいい」
珍しくサザナがそんなことを言う。
「なんでだよ?」
「この木は一本しかないのに、こんなに逞しく生きている」
「一本しか・・・って、これだけ?」
翼を持つテングでも、他の《陸》まで行けるのはサザナだけだろう。そいつが言うんだから本当か。
言われてみれば確かに、ほかの緑の中から突き出たその巨木は、葉を落としたその様子も大きさも、周りの木々から浮いている。しかも、毎年こんなに実をつけるのに、この一本しか生えていないのか。
「 ―― こいつも、仲間がいないんだな・・・」
思ったままつぶやくとまた体が上をむき、ぐううっとさらに上へむかう。
はるか向こうの空の付け根には白い雲が湧いてのぼり、《外の海》の上を渡ってゆく。
「見ろ。この陸はあそこまでだ」
サザナがおれを抱えた腕で、広がる森を指す。
所々で隙間を流れる川が光っていて、昔ジリに連れて行かれた死にかけた狩を思い出す。




