ヤシナ帰る
頭二つ分は奴のほうがでかくて、ジリの頭のてっぺんに言うと、両手をまわし、ごつい背中を何度もたたいた。
ジリは固まったままだし、おれだけでなく、誰も何も言えなかった。
「 どうした?みんな? 久しぶりに帰ったんだぜ。歓迎してくれよ」
固まったジリの肩を抱いて笑っているこの男は、いまジリをなんて『よんだ』?
「 しょ、そ、そんな、 いきなり、こりゃあ、いったい、 なんだ?」
長老の腕が激しく震えてその男を指した。
指された男は困ったような顔をする。
「だからあ、おれはジリの息子だよ。 生まれた日に連れて行かれた。 信じられないのはわかるけどさ。ああ、これ」
黒い服から赤い布の小さな袋を出し、中から何かを取り出した。
「 ―― おれの母親のキリは、文字を知ってるヒトだった。そうだよな?カエル? で、これがおれの名前。《ヤシナ》だ。そんでこの黒いのは何かの種」
おれたちと一緒に黙って見守っていたカエルの細い手が、それを受け取る。
「おおおお」
固まったジリがおかしな声をあげ始めた。
「キリは賢かった」
カエルが男の出した紙を見てつぶやいた。「フッタと同じくらいもの覚えが早かった。おれのところにある書物を全て読んだヒトはキリとフッタだけだ」
「おおおおおお」
ジリの声がいっそう強まり、顔は赤くなりこのまま倒れそうだ。
「ただいまって言っただろ?」
ヤシナにもう一度背をたたかれたジリは、動物みたいな声をあげて、泣いた。
皆が呆然とその光景に見入っていた。
おれ以外は。




