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矢は折られた
「ヒトよ!罰を受ける準備ができたら我らの巣へやってこい!」
見上げた瞬間目が合ったその顔は、おれが知っているいつものサザナだった。
いつの間にか空はうっすらと紫色になり、何かが抜けたようなみんなの顔が見えた。
ぎらぎらしていた目は、焚かれた火のせいだったのか?
皆がテングの白い群が見えなくなるのをみおくってる間、落ちた矢を拾った。
硬くて真っ直ぐだったその木がしっかりと ――
「折られて、いるな」
カエルが眼鏡を押し上げた。
補強のためニカワで張られた木からは繊維が飛び出して、掴んで真っ二つにしたかのようだ。
「これって、誰かの『力』か?」
なんとなく見回すと誰もが口をあけてその矢に見入る。
「そんな折る『力』がある奴などおらん。ジリでも止めるのが精一杯だろう」
呆れたように長老が言い、まだ座ったままのジリをみんながみる。
すると、首がまえにたれたままのジリの背がぴくりと動き、何かにつまみ上げられたようにいきなり立ち上がった。




