テングを撃った者をだせ
「その昔もたくさん血は流された。おれはもう見るのも嫌だが、お前らはそうではないらしいな。 『決まり』を破り、テングを撃った者を出せ」
その命令にいくつかの頭が左右を見合う。
ジリが出てくる気配はない。
「 ―― 待っていただきましょう。それはどうか、おれたちの話を聞いてからにしていただきたい」
長老は頭を上げてさっきより幾分強気を取り戻していた。周りの膝をついた皆も敏感にそれを感じ取り、ヨクニを注目する。
「あの男は昔、その《テング》に生まれたばかりの赤ん坊を連れ去られております。理由もなくいきなりで、未だに帰ってまいりません。 そのうえ、そのときにカミサンもなくしております。それだってきっと、産み落としたばかりの子を連れ去られたせいだ。確かに『決まり』を破ったのは認めますが、それも、そこにいるフッタを連れ去られそうになったからで、決して」
「おれは連れ去られそうになってねえよ!」
布を胸に抱き叫ぶ。
「黙らんか!」
おれを睨んだ長老のまぶたがひくついていた。
「フッタよ、おまえ、なぜそこにいる?おれの言ったことをちゃんと聞いたか?」
一語一語区切るように吐き出す。
「なぜ、《テング》の使者と一緒に?」
そう問うて、下から見上げているのは長老の顔だけではなかった。皆、おれを、睨んでいた。




