『番人』として
「ばかものども!」
いきなりの怒声に皆が振り向くとヨクニが肩をいからせて立っていた。
「『赤い布を着けた使者』がみえたら、すぐに通せと言っただろうが」
左右をにらんだヒトの長は、その場にゆっくりと体を縮めて膝をつき、頭をぐっと垂れた。
「数々のご無礼お許しください」
「ヒトの何代目の長老だ?」
見下ろすカエルの表情のない目が膜に覆われ、いくぶん馬鹿にしたような顔にみえる。
「さあ・・・、もう、数えてもおりません」
「まあ、よかろう」
いきなり、立場が逆転した。
呆然と眺めていたヒトがばらばらと膝をつき始めた。周りを確かめながらその頭が次々と下に向く。
見回したカエルがふん、と話し出す。
「 おれは『決まり』の番人を任されたとき、正直、もう《テング》と《ヒト》の争いは起こらないと思っていた。いや、思いたかった」
カエルのその声はヒトの頭にふりそそいだ。
どうしたらいいかわからずに半端な姿勢を取っていたおれは、カエルと目が合った。奴は、はっきりとこっちを見た。
「これは、血。だ」
ばさり、と赤い布が広げられた。
いや、ほとんど赤くなった白い布だ。焚かれた火の明かりの中で、その赤は黒かった。
その匂いが風に乗ってきてどくんとおれの中身がはねる。
エンが、こんなに血を流した?
足が勝手に動き、震える手がカエルからその布を取っていた。




