ep000.『プロローグ』
――在りし日の教会。とある修道女の話。
あなたには願いがありますか?
それは何に代えても叶えたい念いですか?
その念いが、何に代えても叶えたい"願い"なのだとしたら
その念いはきっと――叶わない。
なぜならそれは、何に代えても届かないから神に、あるいは何かに願ったのですから。
もし、願いが叶うのなら――あなたは何を捧げますか?
その願いのためなら――命を奪うことすら厭わないですか?
あなたの願いが"願い"なのなら、きっと招かれるでしょう。
すべてを捧げて届かぬ"願い"に、命を積み上げ手を届かせる魂の争奪戦――
《憑神遊戯》に。
招かれたのなら憑代が"願い"を叶える力を貸してくれるでしょう。
憑代とは、願いと想いの結晶。
あなたの大切な物を器とし、己の注げる全てで器を満たす。
その願いが神に届くように――想いを捧げて。
そうすれば、満ちた器に宿る神が、力と戒めを与えてくれるでしょう。
力である"恩恵"
戒めである"呪い"
さあ、
己が"願い"の殉教者達よ
己が"願い"の狂信者達よ
後は掴み取るだけです。
全てを奪っても、
その命を燃やしても、
何に代えても叶えたいあなたの――
"願い"を。
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
時折世間を賑わす不可解な事件。
それはとある者たちの仕業だという。
知る人ぞ知る、憑代を纏い超常を成す存在。
徒人には拝むことすら叶わないその者たちは、畏怖を込めてこう呼ばれる。
――"憑神"と。