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67.

コートより返却時のハードルが下がったのは良かったのだが……。


「うーん……これは……」


異世界へのクローゼットの部屋で着替え、鏡の前に立って自分の姿を見る。

着替えている途中で気付いたのだが。

やはりというか……。


「デケェな……」


イチゴくんサイズのシャツは、あちこち布が余っている。

イチゴくんの脚の付け根くらいの長さ裾はオレの膝ちょっと上まで伸びているし、袖に至っては指がちょっとしか出てない。

その袖を掴んで口許に寄せる。


「も、萌え袖やん……」


鏡に映る自分の姿にガックシ凹む。

彼シャツの萌え袖なんて、男のロマンじゃん。


「歩夢先輩、着替えまし……」


ノックをして入ってきたイチゴくんが息を呑む音が聞こえた。

嫌な予感しかしないけど、そぉっと振り返ると、口に手を当ててちょっとウルウルしてた。


「ちょーー」

「歩夢先輩、可愛いですっ」

「うわっ」


感動したイチゴくんに抱きつかれた。



「返事があるまで部屋に入るなって前も言っただろ」

「ハッ……ごめんなさい」


イチゴくんは素直に謝るが少し不服そうな顔をしている。

その理由は……。


「……でもっ、歩夢先輩の袖は僕が捲りたかったのにぃ」


恨めしげに言われる。

それもそう。

オレの袖はオレがお願いしてシフシさんに捲ってもらったからだ。

チラリとシフシさんを見るとすごく困った顔をしていた。


「袖なんて誰がやっても一緒だよ。もう帰るっ」


オレはバッグに濡れたTシャツを仕舞うと立ち上がりシャツの上からパーカーを羽織った。

予想通り、シャツの袖がはみ出て苦い顔をしてしまう。


「ぁ……先輩、可愛い……」


シフシさんを恨めしげに見ていたイチゴくんの顔はあっという間に嬉しそうに笑い立ち上がる。


「ここでいいよ」

「いいえ、駅まで送ります」


コートを羽織るとオレの手を取り玄関に向かう。

結局、駅のホームで、電車が来るまで手は離してもらえなかった。


「じゃあ……明日は1回目から見に行きますね」

「…………」


手を振るイチゴくんに見送られ発車した。

イチゴくんの姿が見えなくなってから空いている席に座ると、仕事とは違う疲れがドット体を襲った。


「ま、マジかぁ……」



❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎


翌日。


宣言通り、1回目から現れたイチゴくんは、終始アワミン(オレ)を愛でた。



【後日談】終わり


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