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66.

駅に向かう途中のファミレスに寄って軽くご飯を食べて外に出ると、少し冷たい夜風が吹いた。

パーカーの下のTシャツは着ぐるみの所為で汗びっしょりで、夜風にブルリと震える。


「歩夢先輩?」

「ぶぇっ……クシュッ」


鼻がムズッとしてすぐくしゃみが出ると、またブルリと震える。

明日も同じところでまた着ぐるみ着るのに、のんびり帰ったら確実に風邪を引く。


「さっ、早く帰ろうぜ」


イチゴくんの背中を押して歩き出そうとしたが、ピクリとも動かない。


「ちょっと待ってください」

「へっ?」


目にも止まらぬ早業で、フワッとオレの肩に温かいものが掛かった。


「これで少しは寒くないですか?」


それまで着ていたコートをオレの肩に掛けたイチゴくんが尋ねる。


「イヤイヤイヤ、これじゃあ、イチーー淡雪くんが寒いだろ」

「大丈夫ですよ。さあ、行きましょう」


オレの腕を優しく掴んでエスコートするように歩き出すが、その肩は少し寒そうだった。



駅に着くとタイミングよく電車が着て乗り込む。

少し混み合う車内はその熱気で暖かい。


「はい。ここあったかいから、もう大丈夫だよ。ありがとな」


コートを返すと「えっ?」という顔をされる。


「でも、電車降りたらまた寒いですよね」

「着く頃には服も乾いてるよ」


たぶん、というセリフは飲み込む。

だって、さすがにコートを借りて帰るわけにはいかない。

返すとなったらこのコート、クリーニングした方がいいと思うし。

つか、この手触りの良いコートのクリーニング代はいくらくらいかかるんだろう?

そんなことを考えながらイチゴくんを見ると、イチゴくんも何か考えているようだ。


「でも、歩夢先輩、駅から自宅まで20分ほど掛かるんですよね?」

「ん、ああ、まあ、住宅街にあるしな」

「じゃあ、ウチに寄っていきませんか?」

「はい?」


イチゴくんはオレの返答を聞かずに最寄りの駅に着くと、オレの手を掴んで電車を降りた。

またコートをオレの肩に掛けると、オレの手を引いて駅から徒歩3分のイチゴくんのマンションに向かった。



❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎


久しぶりにイチゴくんのマンションに行くと、シフシさんが出迎えてくれた。

イチゴくんはリビングにオレを置いて自室に向かった。


「こちらをどうぞ」

「あ、ありがとうございます」


ホットココアのマグカップを差し出すシフシさんにお礼を言って一口飲むと、じんわり体が温まってくるような感覚がした。

ココアの温かさに浸っていると程なくイチゴくんが戻ってくる。


「はい、コレに着替えて下さい」

「えっ、何?」


渡された白いものを広げるとシャツだった。


「中のシャツまだ汗で濡れているんですよね。コレに着替えたら寒くないかなって」

「おー、それは助かるかも」


これなら洗濯して返せばいい。

ありがたくそのシャツを借りることにした。


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