64.
30分後。
「そろそろ出番だよー」
「「はーい」」
自分でできるところまで準備をして、できないとこは手伝ってもらう。
この着ぐるみはすごく良くできていて、目の部分から周りを見るとこができ、耳には毛で隠れているがメッシュで通気口があり、そこから音を拾うとこができる仕様になっている。
そのため、一気に視界が狭くなったオレたちは社員さんたちに手を引かれて歩く。
「みんなー、おっきな声で呼ぶよー。せーの」
「「アワボー!アワミーン!」」
ステージに駆け上りお姉さんの隣に立つと、子どもたちの歓声が上がる。
狭い視界から手を振る。
手を振りながらグルリと見渡すと視界にあるモノが入りギクリとする。
そんなオレにお構いなしにお姉さんが商品説明を始めたため、ウンウンと相槌を打つ。
そして、またあの謎のリズムと歌がはじまる。
「アワアワアワワ~、アワッアワー♪~~~もっともっとー!」
向けられる視線の気まずさに、半ばやけくそ気味に短い腕をバタバタさせる。
絶対バレてる気がする……。
「はーい、みんなありがとう。アワボーもアワミンもありがとねー」
この回もお姉さんが子どもたちと着ぐるみを労う。
「それでは、これから写真撮影に入りまーす。アワボーとアワミンとお写真撮りたい子はこちらに一列に並んで下さーい」
お姉さんが手を上げると今回も子どもたちはわーっと我先に並び出し、順番にステージに乗って親御さんに写真を撮ってもらう。
しかしオレは、視界にチラつくアレが気になって気もそぞろだ。
表情が見えないのが幸いだ。
「写真お願いします」
「はー……い?」
最後のお客さんに、お姉さんはポカンとした顔で首を傾げる。
それを見るオレはアワアワしてる。
もちろん、オレの表情は見えないが。
「あ、アワミンとツーショットでお願いします。2枚いいですか?」
「ぇ……。あ、はいっ」
お姉さんにスマホを預けるとステージに上がってアワミンの隣に並んだ。
「じゃあ、撮りますねー。はい、アワワ~」
お姉さんは謎の掛け声でシャッターを切る。
「はい、もう一枚撮りますねー。アワミンは可愛いポーズして。きゃっ……はい、アワワ~」
お姉さんは顔を赤らめながら可愛いポーズをするアワミンと、その首に腕を回してニッコリ笑うイチゴくんの写真を撮った。
「はーい、OKでーす」
「ありがとうございます。アワミンもありがとうございます」
そう言うとアワミンの耳に顔を寄せた。
「とっても可愛かったですよ。歩夢先輩」
オレの頭の上、メッシュ越しに囁きとリップ音が聞こえた。
や、やっぱり、イチゴくんにはバレてたぁー。




