60.
イケメンとフツメンが手を繋いでいる光景に向ける様々な視線に耐えきれず、ジェラートを買うとすぐ外に出た。
人通りの少ない裏路地に入ると壁に寄りかかりながらジェラートを食べる。
「歩夢先輩、美味しいですね!」
あの視線にもイチゴくんは全然気にする様子もなく、今も楽しそうにイチゴとバニラのジェラートを食べている。
そんな姿を恨めしげに見つつチョコとマンゴーのジェラートを一緒に掬って食べる。
「んっ、こっちも美味い!」
美味しいものを食べたら、オレの悩みなんてバカバカしく感じるわ。
「歩夢先輩のも美味しそうですね」
「イチゴくんも食べる?」
スプーンで掬っていたチョコとマンゴーのジェラートを持ち上げて見せると、目をまん丸にしてオレとジェラートを交互に見る。
おや……?
「えっ……。い、いいんですか?」
「その代わり、イチゴくんのイチゴ食わせてな」
イチゴくんが食べているイチゴ、前回食べたけどめっちゃ美味くて、今日も食べようか迷っていたから、これで一口食べれるならラッキーって思ってた……がっ。
「はいっ」
元気に返事をしたイチゴくんは口を開けてスプーンに乗ったオレのジェラートごとパクリと咥えた。
「……えっ……?」
今度はオレが目をまん丸にして空っぽになったスプーンとイチゴくんを交互に見る。
「んー、本当だ。こっちも美味しいですね」
イチゴくんほ美味しそうに食べて飲み込むと、イチゴとバニラをスプーンで掬ってオレに差し出した。
「はい。僕のもどうぞ」
「ええーっ!んぐっ」
驚くオレの口の中にスプーンを突っ込んだ。
「……あ、美味い……」
「ですよね!」
じゃねぇーっ!
思わぬ形で食べさせ合いっこをしてしまった。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
なんだかんだで、その後もイチゴくんとは手を繋いで歩いた。
それもあってか、イチゴくんに声を掛けてくる女子どもは減った。
イチゴくんに引っ張られながら周辺を散策した帰り。
「歩夢先輩、今日はありがとうございました。とっても楽しかったです」
満面の笑顔でお礼を言うイチゴくんに、なんだかオレまで嬉しくなる。
「オレも楽しかった。ありがとな」
イチゴくんはオレの自宅の最寄り駅まで送ってくれた。
流石に家に招くわけにはいかないので、駅のホームでお別れなのだが……。
「あの……イチゴくん」
「はい?」
気まずいオレとは対照的にニコニコなイチゴくん。
「あの……その……て……」
「て?……ああ、手、ですね」
「もう、離してもらっても、いいかな?」
ここでお別れなのだが、イチゴくんは繋いだ手を離してくれない。
寧ろ、指摘したらギュッって強く握られた。
「えっ……イチゴくん?」
「歩夢先輩が僕のお願いを聞いてくれたら離しますよ」
目を細め微笑むイチゴくんにちょっとだけ不安が過ぎる。
「な、何?」
「……ふふっ。そんな難しいことではないですから」
イチゴくんは繋いでいないもう片方の手も取り繋ぐとオレを真っ直ぐ見つめて言った。
「歩夢先輩。これからは僕のこと名前で呼んでください」
「……ぇ……?イチーーぶっ」
名を呼ぼうとしたら手を引かれてイチゴくんの胸に顔面から飛び込んだ。
「……そっちじゃないでしょ。……淡雪」
「ヒェッ」
耳元に唇を寄せて言われて体が小さく跳ねる。
「呼んでくれないと、この手は離しませんからね」
その声は甘く脳に響いた。




