59.
「いやぁ、予想以上に面白かったな」
「はい。感動しましたね」
「オレもあんな泣けるとは思わなかった」
映画が終わると移動してハンバーガーショップで分厚いパテ2枚もサンドされたハンバーガーを2人で齧り付く。
ジューシーなパテから肉汁が溢れて美味い!
「クスッ、歩夢先輩の唇、肉汁で色っぽいですよ」
「しょっ、しょうがないだろっ。つか……ブッ、イチゴくんだってテカテカしてる~」
「えっ」
2人で同時に紙ナプキンで唇を拭い、思わず笑ってしまう。
早々にハンバーガーを平らげ、セットのポテトを食べる。
「この後どーする?」
「あ、あの……僕、行きたいところがあるんですが」
前のめりに詰め寄られ、思わず仰け反ってしまう。
「ど、どこだよ」
イチゴくんの肩を押し退けコーラを一口飲む。
イチゴくんもオレンジジュースを一口飲んで口を開く。
「ジェラート屋さんです」
「ジェラート屋……?あーもしかして」
「はい。歩夢先輩が行ったお店です」
連絡先を交換した翌日のバイト中に、お互いに会わなかった1ヶ月の間の話をした。
その中で、イチゴくんはオレが友達と行ったジェラート屋の話に食い付いたから、メッセージアプリに店のホームページのURLを送った。
そういえば、あの映画館もここのハンバーガー屋もあの時に話した場所じゃん。
「え……イチゴくん、ストーカー?」
「いえっ、そんなつもりじゃーー」
「ははっ、冗談だよ。これ食べたら行こうぜ。こっからちょっと歩くから、腹もちょうどいいかな」
そう言うと、イチゴくんは嬉しそうに「はい」と返事をして、残っていたハンバーガーとポテトを一気に食べた。
❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎
ジェラート屋はハンバーガー屋を出て30分程移動した先にあったが、着くのに1時間も掛かった。
理由はただ一つ。
イチゴくんが逆ナンくらいまくったからだ。
しかもその度に
「おひとりですかぁ?」
「一緒に遊びませんかぁ?」
と、オレを押し退けて声を掛けてきた。
それだけならまだしも。
オレに気付くとーー
「弟さんですかぁ?」
「プッ、全然似てないですねぇ」
すっげぇ笑われた。
失礼極まりない言葉を投げられる度、オレは耳タコで聞き流した。
まあ事実だし、いちいち腹を立てる方が疲れるから。
でも、イチゴくんは聞き流しはせず、すごく怒ったようでーー
「僕には君たちより歩夢先輩の方が可愛くて魅力的に見えますからごめんなさい」
と、爽やかな笑顔に、嫌味にも聴こえる言葉を乗せた。
それでも、女子どもの怒りを含んだ視線を向ける先はやっぱりオレだった。
そんなやり取りを何度か見てるうちになんか疲れてきて、そんなオレの手をイチゴくんが引いてくれた。
そしたらそれが女避けになったようでほとんど声を掛けられなくなった。
「歩夢先輩は味、何にしますか?」
で、ジェラート屋に着いたにも拘らず、このニッコニコなイチゴくんと何故かまだ手を繋いでいるんですけど……。




