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58.

週末。


待ち合わせは駅前。


といっても、いつもと違う駅前だ。



「あ……」


待ち合わせに指定した場所には人だかりができていた。


「あの……人を待っているからごめんなさい。……あの……僕そういうのは興味がないのでごめんなさい。……あの……あの」


ほぼ女子の要塞の、たぶんその中央に先に到着していた彼は声を掛けてくる人たちに対し律儀に応えてる。

無視するなり冷たくあしらえばいいのに。

とりあえず、救出を試みる。


「あのーすみませーん。通してくださーい」


下手に肩とか触れたら痴漢扱いされそうだから、先に声をかけてみるけど無視された。

クッソォー。


「イーチーゴーくーん!」


ヤケクソで大声で名を呼ぶと、中心からピョンと頭が飛び出て目が合う。


「あの……ごめんなさい。……あの……通してください」


女子どもをかき分けて要塞から出てきたのは……。


「歩夢先輩!こんにちはっ!」


やっぱりイチゴくんだった。

嬉しそうな笑顔の背後から送られるチクチク視線が痛い。



まず向かったのは映画館……ではなく帽子屋だ。

兎に角、この無駄にイケメンのご尊顔を世の視線から隠すためだ。

ニット帽にはまだ暑い季節だからキャスケットにし、レジ前にあった眼鏡も買うとその場でタグを切ってもらう。

これで少しは顔が隠せる。

が、……イケメンオーラは隠せなかった。


「まあいいか」


ちょっとは隠せているし。


「歩夢先輩も可愛いですよ」

「お、おう、サンキュー」


何故かお揃いで買った。

イチゴくんが。



イチゴくんとオレの変装が終わり、今度こそ映画館に向かった。

イチゴくんのリクエストのアニメだ。

テレビCMをバンバンやっていてオレも興味があったけど、友達にはちょっと誘いづらくて、でも1人で見に行く勇気が持てなかったから誘われた時二つ返事で了承した。


あらかじめ予約していた座席チケットを発券する。

なんとか取れたチケットは前方だったが、イチゴくんは取れたことを喜んでくれた。

その後、ポップコーンとコーラ、イチゴくんはアイスコーヒーを買って早めに席に着く。


「でも、イチゴくんがこの映画観たいなんて意外だった」

「実写では表現しきれない世界観や表現がアニメにはあるじゃないですか。僕、そういうお話好きなんです」


魔法が使える世界にいる人とは思えない発言だ。

でも買ったパンフレットに視線を移し、目をキラキラさせてアニメを語るイチゴくんの姿にキラピカくんを思い出してほんわかする。

普段の落ち着いてる姿はオオキミくんとよく似ているから、やっぱり兄弟だなって思う。

そんな話をしているうちに照明が落ちスクリーンに映画予告が流れた。


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