表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/68

57.

「先輩、バイト終わったら少しお話しできますか?」


ギクシャクした雰囲気での勤務もあと1時間というところで、イチゴくんが声を掛けてきた。

「NO」と言えない今のオレは頷くだけでやっとだった。



❇︎❇︎❇︎❇︎❇︎


6時15分をちょっと過ぎた頃、帰り支度を終えたオレとイチゴくんは一緒にコンビニを出た。

いつも、裏の出入り口で待ち伏せしてるイチゴくんに捕まって駅まで一緒に向かうことはあったけど、タイミングを合わせて一緒に出たのは初めてかもしれない。



「で、ははは話って何だよ?」


駅まで徒歩7分。

その間だけでいいと言ったのに、歩き出して3分、イチゴくんはずっと無言で、オレが先に痺れを切らした。

その3分だけで色々考えてしまったから。


いつになく真面目な横顔。

耳タコになるくらい聞かされた「結婚を前提に付き合ってください」の台詞はバイト中一切言わなかった。

会わずにいた1ヶ月の間に、イチゴくんの気持ちが変わってしまった?


もしかして、バイト辞めちゃう?


そんな不安がグルグルした。

だから、オレから切り出すと、イチゴくんは少し躊躇いがちに口を開いた。


「あの……大したことではないのかもしれませんが……」


ゴクリと唾を飲み込む音が頭に響く。

「ああ」と言ったはずの声は掠れてオレでも聞き取れない。


「あの、歩夢先輩っ」


オレの名を呼ぶと何かをポケットから取り出す。


「ぇ……」

「連絡先教えてください」


手紙を渡すようにオレの目の前にスマホを差し出した。


「…………は?……はああぁぁぁぁ?」


気付けば駅前まで目と鼻の先まで到着していた。



「つか、そういうことはバイト中か終わってからすぐ言えよな」


駅前のコーヒーショップに入り、奥の席でアイスカフェオレを半分まで飲み干すとそう愚痴った。


「す、すみません。歩夢先輩と気まずくなって、どう切り出して良いか迷ってしまって……」

「うっ……ご、ごめん」

「あっ、いえ」


オレが全面的に悪いじゃないか。

項垂れる視界に入ったスマホを見る。

オレの持っているスマホと同型の機種っぽい。


「歩夢先輩を見送ってすぐ、先輩との連絡手段がないことに気づいて……。この1ヶ月、僕にはとても長く感じる1ヶ月間でした」

「……うん」


オレも長かった。

この1ヶ月、話したいことたくさんあった。


「このスマートフォン、昨日契約してきたんです。歩夢先輩と同じ機種です」


イチゴくんは嬉しそうにスマホを撫でる。


「それで遅刻したの?」

「それでってわけではなくて……。その帰りに地下鉄が止まってしまって……その後、駅を出てすぐお酒に酔った方とぶつかって、その方が持っていたお酒を被ってしまったため一旦帰宅してシャワー浴びてきました」

「おおう……それは災難だったな」


そんな目にあって更に不機嫌なオレと一緒に仕事はキツいよな。

本当に申し訳なくなった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ