54 8月
こっちの世界に戻って数日。
オレは家族から何処に行ったのか何度か聞かれた。
「お土産は鹿児島のお菓子だからそっち方面なのは分かるんだけどなぁ」
「あー、その辺。かなりど田舎だったから何処かはよくわからなかったかな……あは」
こんな下手くそな誤魔化し方しか出来なかったけど、特に追求はされなかった。
たぶん、聞くのが面倒くさくなったんだな。
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8月に入り、オレは申し込んでいた派遣バイトの説明会に行った。
説明会後、すぐにバイトの登録をし証明写真を撮って貰うと求人の掲示板を覗いた。
だが、募集のほとんどが【要経験者】ばかりで、オレができる仕事がない。
項垂れるオレに社員さんがちょうどいいバイトがあるからと紹介してくれ、翌日から働くことになった。
それから何度か紹介された入ったバイトは、着ぐるみや子どもイベントのスタッフと、お子様たちと接する仕事ばかりだった。
それでも、オレには結構向いていたようで楽しく仕事ができた。
特に着ぐるみは、顔が見えないからどんな動きをしても全然恥ずかしくない。
暑くて体力の消耗は激しいけど、その分休憩も多かったし、イベントに来た子どもたちが着ぐるみをきたオレが動くと喜んでくれたからやりがいを感じた。
バイトの入っていない日は都合の合う友達と遊んだ。
浪人中の去年はバイト以外は勉強ばかりしていたから、今年の夏はなかなか充実した内容だった。
去年に比べたら、だけど。
十分楽しかったのに、どこか物足りなかった。
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8月もあと1週間で終わる。
今日はバイトも遊ぶ予定もない。
自室でスマホのアプリゲームをポチポチ遊ぶがすぐ飽きて閉じると、電話、メール、メッセージを順番に開いては閉じる。
「来るはずないのに何やってんだオレは……」
今日何度目かのため息を吐く。
昨日まで単発バイトと遊びでスケジュールをギチギチに詰めた。
それでも、隙間があれば通知がないか見てしまう。
来るはずないのに。
「イチゴくんの連絡先、聞いとけばよかったな……」
聞いておけば、返事が来なくてもメッセージは送れた。
『今日のバイト、こんな着ぐるみ着たんだぜ』
『新しく出来たジェラートショップに友達と行ってきたけど、アイス美味かったー』
そんな他愛のない話が送ることができたのに。
向こうの世界に電波届くかわからないけど、さ。
「はぁ」
またため息が溢れた。
こんなに寂しい気持ちはじめてで、オレはこれがどういう意味の気持ちなのか、どうしていいか、全然わからなかった。




