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42.

フラついたオレの体をアウルは支えてくれる。


「アユム?」

「あれ……何だ?……体に力が……」

「クソッ、神経毒か……」


ぺたりと座り込むオレの足首に小さな切り傷を見つけたアウルは悔しそうに唇を噛む。


「どく?」


あの針に仕込まれていたのか?

ちょっと掠っただけなのに体内に回った毒のせいで、体を支える腕に上手く力が入らなくてプルプル震える。

オレよりもアウルの体の方がたくさん傷ができているのに、オレのような症状は出ていないように見える。

首を傾げるとカサっと背後に草を踏む音が聞こえ、気付いた時にはオレはアウルに庇われ横に転がった。


「アウルっ」

「チッ」


アウルの肩から血が流れる。

躱しきれず剣先が当たってしまったようだ。


「毒が回った状態でもそこまで動けるとは流石だな」

「……こんなものが俺に効くわけがない」

「それは承知している。その子どもに効けば十分だ」


複数の足音に見上げるとまた男たちに囲まれてた。


「アユム……コイツらを片付ける。その小屋に隠れていろ」

「え……アウル?……あっ」


アウルは後退りし小屋の扉を開けるとオレを中へ投げ込んだ。

3度転がり顔を上げると、扉はパタリと閉じられ真っ暗になる。

この扉の鍵は閂で外から鍵をかけるタイプで、扉が閉じられた時に「ガチャ」と音が聞こえたから鍵をかけられたのかもしれない。

窓もない真っ暗な空間に聞こえるのは金属がぶつかる音と野太い悲鳴だ。


「アウル……」


今のアウルにとって動けないオレは足手纏いでしかない。

だからここにいた方が安全でアウルは自由に戦える。

でも、窓もない真っ暗な空間は息が詰まって怖い。

早く扉を開けて欲しい。

灯りが欲しい。


「えっ⁉︎」


突然建物全体が明るくなった。

その灯りはメラメラと音を立て建物内の温度を急激に上げていく。


「……火事?……うっ」


明るくなった建物内は木材だらけで、次々に火が移って黒煙を上げ始める。

煙を吸い込んでしまいゴホゴホと咳き込む。

轟々と燃える火が酸素を奪っていく。


「くっ、熱い……ケホッ……苦し……」


袖で口元を押さえて耐えるが、煙が目に染みて涙が出る。

激しく燃える建物はあちこち崩れ始める。


このまま一酸化中毒で死んでしまうのか?

それより先に建物が崩れて焼け死ぬのか?


「ぁ……」


なんで……。

なんでこんな時にアイツの顔を思い出すんだよ。

他人なのに。

家族よりも先に出るんだよ……。


「こんなことになるなら、名前、呼んでやれば良かったな……」


煙とは違う涙が出る。

左耳のピアスにそっと触れると、この熱気で熱くなっていた。

目を閉じると、この石よりももっと綺麗な赤い瞳の青年の顔が浮かんだ。


「……あわゆき……」


瞼の裏に浮かぶ一個下の悔しいくらいイケメンの名を呼ぶと、耳元でパリンと小さな音を立ててピアスが壊れた。


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